コラム
前回のコラムでは、義父母との不仲や過干渉が離婚原因になる場合があり得ることを説明しました。
今回は、実際に両親との関係が離婚原因として主張された裁判例をいくつか紹介します。
(1) 妻と夫の両親との不仲につき、妻がどんなに努力しても、夫が従前の無関心な態度を改め、積極的に家庭内の円満を取り戻すよう努力しない限り、家庭内の融和を取り戻し、これを維持することは不可能である状態になっており、それにも関わらず夫がそのような努力をする態度が見られず、婚姻関係を維持する意思すらないとして、妻の離婚請求を認容した事案(名古屋地岡崎支判昭43.1.29)。
(2) 実質上婿入りした夫が、妻の両親の平素の言動、評価は極めて当を得ていないものであり、妻の両親との軋轢に対しての認識の程度、その態度は妻として条規に欠けていた状態で、夫が妻との婚姻継続意思を喪失し別居し、その後4年を経て他の女性と同居した事例で、夫の離婚請求を認容(山形地判昭45.11.10)。
(3) 婚姻生活は結婚当初の短期間を除いて言い争いが多く、時には激しい対立があったが、この主原因は母に絶対服従する妻の態度に対する夫の不満との衝突という外在的要因によると認定。
しかし、妻は反省して婚姻継続を希望していた。これに対し、夫は、円満な夫婦関係の実現にさしたる努力もしないで妻を非難、嫌悪するに走りすぎており、有責性も高いとして夫の離婚請求を棄却した事案(東京高判昭56.12.17)。
(4) 同居している夫の姉の節度のない男性との交際が原因で、夫婦仲まで険悪となり、約7年間別居生活が続いていた。
もともと夫婦間に固有の紛争があったわけではなく、夫において姉と別居するなどして良好な婚姻関係を取り戻し得る可能性があり、またそのような決意もしているとして、妻からの離婚請求を棄却した事案(東京高判昭60.12.24)。
以上ご紹介したように、実際の裁判例では、義父母との不仲などがどのような状態であるかを詳細に検討し、さらに周辺事実をも加味したうえで離婚原因があるか否かを総合的に判断しています。